HELLO STONE PROJECTいしみがくひとくらし

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HELLO STONE PROJECT

vol.3 ファッションデザイナー 廣川玉枝さんが聞きにいきました。

「服が身体を覆うように、石は建築物を覆っている」。

 

関ヶ原石材は、建築物の外装やインテリアをはじめ、さまざまな石材を扱っている会社で、取扱高は日本一。たくさんのビルを手がけています。

70年近い歴史を持っているので、会社の中には石にまつわる知識や知恵がいっぱい。

面白いエピソードが、あれこれ詰まっているのです。

 

この連載は、石について広く深く知っている関ヶ原石材の日比順次さんが、デザイナーやアーティスト、建築家、ジャーナリストなど、さまざまな業界の人をお招きし、おしゃべりするコーナーです。

 

新装した本連載、二人目にお招きしたのはファッションデザイナーの廣川玉枝さんです。

「イッセイミヤケ」のデザイナーを経て独立し、自身のブランド「ソマルタ」を率いながら、ファッションに限らず、さまざまな分野におけるクリエイションを手がけています。新しい分野への挑戦も意欲的に行なっていて、2018年のWIRED Audi INNOVATION AWARDなど、数多くの受賞歴をお持ちです。

石とファッション――一見すると関係がないように見えますが、二人のおしゃべりは広がりました。

 

廣川さん:

初めてここ関ケ原を訪れたのですが、工場の規模の大きさに驚きました。見学させてもらって、とても気分が高揚したのです。

人間が作れないものを地球が作っている。そんなエネルギーに触発されました。

 

日比さん:

もしかすると廣川さんは、石と対話されたのではないでしょうか?

僕も時々感じるのですが、石と相対していると、無言ながら何かを語りかけてくれるのです。

また、工場のことを褒めていただいてありがとうございます。大きなものを扱っているのでそれなりの規模なのですが、実は敷地の中を東海道新幹線が通っているのです。名古屋を過ぎてしばらく行くと、新幹線の中から見えるはずなのですが。

 

廣川さん:

えっ、そうだったのですか。うっかり気づきませんでした(笑)。帰りはよく見てみます!

ここの魅力は何と言っても、たくさんの大きな石がゴロゴロと置いてあること。何億年もかけて地球の中で作られた石が、人の手で切り出されたと聞いて、尊い価値を持っていると感じ入りました。

 

日比さん:

地球が作った自然物のひとつであり、あれだけの種類があることを、一人でも多くの人に知っていただければと思い、「ハローストーンプロジェクト」というものを進めています。

 

廣川さん:

どんなことをやっているのですか?

 

日比さん:

暮らしの中で石を身近に感じてもらおうということで、インテリア雑貨として使えるものや、石をアートのように飾るプロダクトを作って販売しているのです。

 

廣川さん:

いいですね。天然のものだから、暮らしの身近に置いてあると、身体も心も気持ちよく過ごせそう。

私は小さい頃から石に興味があって、いわゆる「石ころ」が好きなのです。自宅でも庭に石を置き、少し赤身を帯びた砂利をまいたりしています。

見せていただいた、石を壁にかけて飾るアイデアはとても良いと思いました。

 

日比さん:

「しかくいし」と名づけたプロダクトで、簡単に壁にかけることができる石なのです。

考えてみたら、石と服は共通するところがあるのかもしれません。

廣川さん:

私もお話をうかがっていて、服が身体を覆うように、石は建築物を覆っているのだと感じました。

 

日比さん:

私たちの仕事は、建築物の外装として石を加工して組み上げること。いわば建物に石を着せる役割ととらえることができるのです。

外装として使う石の強度を高めるためにガラス繊維を貼ることがあるのですが、あれは布に芯地を貼るのに近いのかもしれません。

 

廣川さん:

そういうプロセスにも興味が湧きます。

私は「服は第二の皮膚」ととらえていて、「人が服を着る」とは自己を表現するものであり、自分の意識や心地にも影響を及ぼすと思っているのです。が、その文脈で考えると、人が過ごす空間を石が覆っているわけで、「空間が石を着る」「建物が石を着る」という感覚はよくわかります。

服がそうであるように、石も人の意識や心地に影響を与えるのでは?

日比さん:

そういう側面はあると思います。

普段は気づかないようで、皆さんも何となく「この建物は心地良い、この空間は少し居心地が悪い」といったことを感じているのではないでしょうか? 

 

廣川さん:

そういうところ、確かにありますね。

服の場合は、肌に触れるものとして心地良い悪いということもありますが、そういう機能だけでなく、その服を着ることで気分に作用するところは大きいと思いますし、そこまで視野に入れたデザインを心がけているのです。

 

日比さん:

廣川さんがそうやって服をデザインされるように、建築家やインテリアデザイナーの方々がデザインした意図を、かたちにするべく石を加工するのがうちの役割。デザイナーの方の思いをどれだけ実現できるかに力を注いでいるのです。

 

廣川さん:

服作りも一人で完結するのではなく、かたちにしてくれる優れた作り手の方々とのチームワークで成り立つもの。そこは一緒ですね(笑) 

後編では、そんな石と服の魅力ついて、もっとお話できたらと思います。

 

(後編に続く)